Videonews マル激第971回 ゲスト松岡亮二 2019年11月16日 視聴メモ

とても面白い回だったのでメモ。

神保・宮台へのゲストからの質問もスリリングで、二人からもいつもと少し違う話がきける。

 

番組の導入文

萩生田光一文部科学相が10月24日、2020年度から始まる大学入学共通テストで活用される英語の民間試験について、テレビ番組で「(英語民間試験は)自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえば」と発言したことが、大きな波紋を呼んだ。その後、2020年度からの実施が予定されていた英語の民間試験の導入の見送りが発表されるなど、今も混乱が続いている。

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ゲストは明晰かつ注意深い物言いをして大変話が聞きやすい。その分神保さんと宮台の脱線が目立つ。基本的にはブルデュー文化資本の話と一緒だが、データで示す。学者としての発言に禁欲しているが、人の良さがにじみ出ているように思う。

 

 

内容概観

・教育格差が最近の現象というイメージがあるが、実は昔からある。

・家庭の社会経済的地位SESと教育格差の関係が大きい。

 SES (Socio-Economics Status) のスコア化

 所得と両親の学歴、蔵書、職業威信(専門職か否か)などで数値化

親の教育があると、意図的養育(習い事に限らず、だめな理由を言葉で説明なども含む)する傾向がある→ 学校教育と親和的な子供が育つ。小学校進学時での格差。

・小学校で、入学時の格差はあまり埋まらない。学校差、地域差あり。

・小学校:日本では学校教育の規格化が過剰。かつ行政からの教育への支出は小さい→両親の支出による教育が大きくものをいう。

・中学、高校でこの格差が維持される。

・教育を支援する姿勢を地域、学校、親がもっているか否かが、教育機会の差になる。

 

松岡氏の意見(学問的主張とは別に個人的意見)も真っ当

・生まれの差によって子供に与えられる機会が異なる現状を変えたほうがいい。

 子供が地域・教育格差によって低いセルフイメージをもち、自分の可能性を低く見積もってしまうのは、悲しい。

・「恵まれた人」に関しては、恵まれている理由を理解すると、違う人たちに対しても優しくできるのではないか。

少子化なのだから、平等に機会を与えて、開花させたほうが社会的にも合理的。

・「個人の能力を最大限に活かすために教育を与えましょう」しか言わないと、教育格差が単に開いていくだけなので、上の主張は格差拡大になるということを自覚する必要がある。格差を縮小するためには、affirmative action的に何かしないといけない。

・具体的には幼児教育段階で、養育者(親)への支援、援助をする必要。実際にやろうとすると難しいが。

・対GDP比の教育費の公的支出がOECD諸国ではかなり低いので、教育学・社会学的なデータをもっと収集し、財務省に支出を促すようなことを文科省には必要。

・教育にまつわる議論においては「べき論」に陶酔する論者が多いので、そこは注意してデータを見る。

・「まずわたしの本を買って読んでください(笑)」。

教育格差 (ちくま新書)

教育格差 (ちくま新書)

 

 この本が一般的な本としては初著作らしい。

 

面白かったくだり

アメリカでは文化的格差が肌の色で大体わかる/日本では文化的格差があるが、人種的差異として現れないので、格差なしに皆包摂されているように見える。

 ↓

宮台真司社会学者ジョック・ヤングの「過剰(擬似)包摂」論 

実質的には包摂されていないのに、包摂されているようにみえる。

例 1スタバの利用者 貧富の差なく誰でも使えるが、実際は格差がある。

 

後期近代の眩暈 ―排除から過剰包摂へ― 新装版

後期近代の眩暈 ―排除から過剰包摂へ― 新装版

 

 

 

 

最後にした神保さんと宮台への質問が新鮮。

・20年前からビデオニュースをやってきて、社会が変わってきたかというと、多分違うと思う。お二人も満足されていないと思うが、そういうときにどのような感想をもつか? 若い世代は自分のように「専門」領域で査読論文を書くことからしか始められないが、それもふまえて若い世代に対してアドバイスを。現在から始めるとしたら、どうするか?

・言い換えると今の若者が宮台や神保さんのようなことを目指すのは難しいと思うが、どういう道がありうるとお考えか?

宮台のストレートな反省(昔は観客)を引き出したわりと珍しい質問。

神保さんは、今も昔も変わらず、この道を貫く。

宮台 「下駄」を履いていられる恵まれた人々に倫理的教育をすることが今は大事だと思う。

 

クイズ形式で概観部分の紹介

Q1 親の学歴により習い事や教育サービスなどの利用格差が顕著になるのは

a 小学校就学以前 b 小学校低学年 c 小学校中学年 

答えa

Q2 公立の小学校同士の間で学力格差が確認できるのは・・・(地域差がある)

a 1年生から  b 4年生から c 6年生から                        

答えa

Q3 家庭の文化資源(蔵書数)による学力格差は小6から中3までの間学年が上がるにつれ・・・

a 拡大する b変わらない c縮小する 

答えb (小6頃までについている差は、それ以降あまり変わらない)

Q4 戦後、教育格差(親の学歴と子の学歴の関連の強弱)は2000年頃から大きく

a拡大した b変わらない c縮小した

答えb 昔からそうだった

Q5 相対的貧困にある子供の数は1980年代と比べると2010年代に大きく・・・

a増えた b変わっていない c減った

答えb変わっていない (絶対数は変わっていないが、率が増えている)

Q6 授業以外でまったく学習をしない15歳の割合が最も高い国は

a アメリカ合衆国 b フィンランド c 日本

答えc日本

Q7 日本の教育格差は国際(OECD)平均と比べて

a大きい b 変わらない c小さい

答えb