Videonews マル激第985回 なぜ東京都心の真上を大型旅客機が飛ぶことになったか知っていますか? ゲスト稲垣久和氏(東京基督教大学特別教授) 2020年2月22日 視聴メモ

マル激トークオン・ディマンド 第985回 

なぜ東京都心の真上を大型旅客機が飛ぶことになったか知っていますか? 

ゲスト:稲垣久和(哲学者)

 

前半 羽田の新ルート問題

・都心を急角度で着陸する2ルートが2020年3月29日から運用開始。

・騒音、物質落下(氷や部品)、着陸時の危険性などの問題

・決定プロセスの問題 住民が実質参加していない 決定ありきの審議会と説明会

 

後半 

・民主主義の決定プロセス

宮台、ピティエ 他の人々への共感がない決定プロセスの不備

稲垣、直接民主主義的な熟議のプロセスが必要だった。

などなど

 

問題の根は、いつもの問題。政府の意図ありきの決定。住民の参加が形式的で結論ありき。この問題をメディアが報じていない・・・。

ゲストの稲垣氏は民主主義の正論を唱えてぶれない。このくらいの世代の人はダメな人も多いけど、立派な人も多いことも再確認。

 

羽田問題自体は前編。全然知らなかった。 

後半は民主主義論。わりといつもの話だが、宮台がもう言わなくなった熟議論などの正論が聞ける。

 

以下内容まとめ

 

 

前編 

1. 最初の話題

1 コロナ・ウィルス問題

ダイヤモンド・プリンセス号。グリーンゾーンとレッドゾーンの区分けが無茶苦茶だとわかった話。外部に出て隔離すればよかったのではないか。

リスクマネジメントの失敗が明らかなので、とにかく方法の調整が必要。

2 コロナ・ウィルス問題 一般人のできること

・手洗いうがい

・人ごみに行かない。公共交通機関に行かない。

・インフルエンザと比べたら規模は小さいのに、情報量だけ多い。

3 末期状態の政権 報道できていない

ANAホテル、黒川検事問題 メディアでチェックできてない。 

・黒川検事問題 政治案件をつぶしてきた。政権的には黒川が必要で定年延長までさせてきたが検察内で不満、反対の動き。

 

2. 羽田離発着が都心上空を飛ぶようになった 経緯と問題点

1 議論のはじめ

・地元合意が得られていることになっている・・・

・「沖縄にも負担を押し付けているのだから、東京でもあってしかるべきだ」・・・議論に否を唱える。

・誰の得にもならない新ルート

・東京が我慢するから沖縄も我慢しろ論に転化するから東京も論はおかしい。

 

2. 新ルートとは

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新ルート2本。数字は航空機の高度。低くなるごとに騒音が大きい。

直下で高度が近いところの騒音はすごい。また、2ルートの間も騒音がすごい。

国交省は経済効果でごりおし。稲垣氏:私的会話ではなく、公共的対話が必要。

 

2月2日から試験飛行。3月29日から正式運行(午後15時〜19時)。

 

3. 技術的諸問題と政治的問題(横田空域問題)

航空評論家杉江氏:大都市の上の飛行は世界の潮流ではない。

・進入角度が世界一難しいものになる。滑走路の進入角度3.45 3.0が現在の普通基準。

フランクフルト3.2が今の所一番難しい 嫌な場合は3.0を選べる 羽田は常に3.45 夏場はさらに角度が上がる。3度と3.45度は全然違う。ジェットコースターのような感じになるので、ほんのちょっとの角度の違いといった問題ではない。

・落下物が都市に落ちる。氷や部品の落下。

・夏場はエンジンの出力が大きいので騒音が大きい。

 

横田空域問題 米軍の空域

・横田空域を使える許可がでたが、高度を上げないといけない。A滑走路

・高い高度から着陸しないといけないので角度が高くなる。

・C滑走路は角度を3.0にできるが、二つのルートで差ができると、Cの騒音が大きくなって不公平だという考えのもとで3.45にする。 問題:住民には聞いていない。国交省と航空会社だけのやりとり。

日米地位協定問題から3.45で統一した可能性(神保さん)

・横田空域は法的根拠はない。アメリカ政府との取り決めではなく、日米地位協定にも書いておらず、米軍の運営上設定されている。こんなに広域を使わせているのは本来あり得ない事態。

 

4. 稲垣氏から問題提起

・騒音、落下物、あるいは生命に関わるものなので、着陸の進入角度の技術的問題はもちろん重要。しかし角度が3.0になればいいという話ではない。

・都心上空を通ること自体まかり通るというのが、民主主義的決定プロセスが機能していないことを示している。

・元来選択肢としては、首都圏の空港機能強化に関しては、横田飛行場の軍民併用利用案もあった。政治的努力、政府の交渉次第で、東京上空を通す必要もなかった。茨城空港の利用も視野に入れた4空港群による首都圏空港機能向上構想がもともとあった。

・なぜ羽田集中になったか。熟議民主主義の課題として反省すべき問題。

 

5. 羽田集中がどう決まったか? 決定プロセスの問題点

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羽田新ルート運用決定に至るまでの経緯

・2013年9月東京オリンピックが決まったのを契機に、羽田集中案に急進展。「審議会」と「小委員会」で羽田の新ルート案が2014年7月に出来上がる。

・その後、「自治体も含めた協議会」が開かれた。

問題点:副知事が行っているが、選挙で選ばれた人ではない(必ずしも「民意」を反映していない)。

・住民説明会は「したてい」にされている。「テラスルーム」と「教室型の住民説明会」。テラスルームは論外。教室型は、一応、住民が参加できた。世田谷区では13回。

・教室型の説明会の問題点:議論の時間がない(質問・発言は一人3分まで)。スマホ録音、写真、SNSダメ。NHK取材拒否などメディアを排除。説明会は毎回ブーイングだが、メディアでは報じられない。新聞も書かなかった。

→ 結論ありきの「丁寧な説明会」をしたというテイのアリバイ。

・メディアでの議論が必要、メディアの責任

 

後編

前段からの続き 民主主義のプロセスの問題

1 国交省のいう新ルートの目的、メリットの検討、背後の意図は?

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国交省のいう新ルート設定の目的。

だが都心の上を飛ばすメリットが意味不明。処理能力がたいした上がるわけではない。

 

ではなぜ? 

予想される意図

神保さんまとめ

・実験的。羽田拡張計画を進める上での一プロセス?

・オリンピックという機会にとりあえず進めてしまおう、そのあとはそのあとで考える。

・そんなに反対が出なければ、そのあとでさらにルートを増やすという意図。

稲垣氏

・東京一極集中をさらに進める意図がある。リニアなどで名古屋圏までを首都圏に、IRなどとも統合した大首都圏構想を考える輩がいる???

・稲垣氏の意見 地方創生が必要。ITと親和性もある。一極集中より裾野が広い。

 

増便の50便のうち半数がアメリカ便 どのようなビジネスを進めたいのか推して知るべし。

 

2 成田回顧

土地収用法で農民などから土地を取り上げた。この問題。進めた側にも悔やんだ者がいる。

今回のプロセス 成田の反省が全くない。

稲垣氏:政権の問題 官邸主導マターの問題 アベノミクスポンコツ決定。

 

スーシティでは事故があったときの住民対応もあった。住民への周知、事故対策、訓練の必要性。

安全である前提で進めている。国土交通省は事故責任はとらず航空会社の保険。

 

行政官僚機構の暴走列車問題。

 

3 品川区住民投票直接請求運動

30万人の50分の1 6000人は最低必要。50000人くらい署名が集まったら議会でも力をもちうる。区議会議員も反対に転じる可能性。

 

バードストライク

 

都会の人間をなめている? 孤立して個人主義化しているから、連帯して反対などしないだろうという判断

 

本紹介 

 

稲垣氏著作

「働くこと」の哲学――ディーセント・ワークとは何か

「働くこと」の哲学――ディーセント・ワークとは何か

  • 作者:稲垣 久和
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2019/11/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

4 まとめ

宮台:非合理、黒幕不在の総無責任 

稲垣:長丁場で小学校から民主主義教育を。ルールは必要、ルールをどう変えるかを議論する練習をしていく。

 

岩田健太郎問題

中国の方が進んでいる問題。情報公開は日本の方が遅れている。

岩田、ANAホテルを見殺しにするメディアの問題・・・

 

安倍が終わったとしても、次の同じようなのが出るかもしれない。

教育から立て直す必要。

 

感想

稲垣氏は非常にオーソドックスな話と正論でぶれない。教育が必要という考えも同意。一般市民としてもブログでだけでももう少し発信するべきかと啓発される。