Videonews マル激第972回 従来の家族観を変えなければ児童虐待はなくならない ゲスト信太さよ子(公認心理士、臨床心理士) 2019年11月23日 視聴メモ

視聴メモ

 

ゲストは50年来この問題を扱ってきたベテラン公認心理士、臨床心理士 しゃべりがざっくばらん。今日は神保氏ではなく迫田氏が司会。混ぜ返し方が神保さんとは違っているが、素朴な感想を代弁してくれるので、話がいい感じに展開してよい。

 

ゲストの信太氏は、非常に素直に話す人で話がわかりやすい。体験ベースの話になりがちなのでどれくらい「全体」を見渡した議論かはときどき疑問だが、話題はすべて具体的で面白い。宮台とは話が合うようで、別の角度から補いあっていいバランス。宮台の「言葉の自動機械」論がいつもより詳しくわかりやすく展開される。グレゴリー・ベイトソンの話など面白い。言葉の外でつながれないということは、つながれない場合暴力に急転する。

 

番組は、この20年ほどの虐待事件の質の変化の話から。虐待が短絡的になってきている。また昔は母親対策だったが、最近は父親が仕事がなくて、妻が働きに出る間の子供との接触機会が増えている。父親への育児教育がなくての虐待の増加の可能性(目黒区5歳児虐待死の例に象徴される)。コントロールしないと落ち着かない人間がコントロールできる場が家庭の自分より弱い人たちになった場合の悲惨について考えさせる会になっていて面白い。

 

警察がDVに乗り出すようになった転機の話が面白い。厚生省と内閣府との縦割り行政からくる、虐待、DVの扱いの不一致の問題なども、興味深い。

 

 

 以下、発言メモ

・二人:養父差別には要注意! 

・信太:目黒事件、社会でうまくいかなかった「コントロール系」が家族に向かう例のようにもみえる。

・信太:DV被害者について 相談すればいいのに、逃げればいいのに、と思うかもしれないが、ネットワークから断ち切られている場合が多い。

・宮台:言葉の自動機械 「愛」という言葉の奴隷(宮台) 

・宮台:ダブル・バインドベイトソン)の話 子を愛していない親が言う「愛」を子は信じようとするが、実際は愛していないのは感じている。「愛されていない子」になるのは耐え難いがゆえに、親の「愛」を信じる。

・信太:「愛」、「親の愛」を語りだすと、「巨大な何か」が回り出すので、カウンセリングでは禁句。「愛情」より「安心」を問題にすべき。

・信太:トラウマの話 被害の文脈でパーソナリティー障害などがすべて理解されるのが問題。性暴力では重要。「発達障害」ばやりをディスっているのはけっこう面白い。

・二人:「言葉」による規定と「感情」の違いを意識するべき。「お前は優しい子だね」という親の規定に子供もはずれないようにしてしまう。親以外の「査定」がなくなるとコントロールがいよいよ厳しくなる。虐待は昔からあるが、子供が親以外の文脈をもたないことが増えている点が問題。また親自身もコントロール系が強くなりすぎている。

・信田:子供の暴力 言葉によるつながりが失われたとき、子供は暴力に訴えるしかなくなる。ひと昔前の家庭内暴力によくあったパターン。

・宮台:家庭内暴力の「依存的暴力」の側面、親さえいなければという思い。親があてはめてくるカテゴリーのせいだ! 

・信田:DVは被害者意識からくること多し。「なんで俺を怒らせる」、「なんで俺に殴らせる」が決まり文句。DV者は「正義」から行っている。

・信田:家族関係は愛情の融和というより政治的せめぎ合いとみたほうがよい(こともある)。愛による融和でないという意味で面白い。

・宮台:マニュアルを参照する親、基準を満たすことで不安を解消しようとする。「東京」の足元見られないようにする、不安の粉飾決算 

・信田: 2012年のストーカー殺人対応に警察が失敗。警察の威信が傷ついて、全国的に対応が変わる。家族の中の女と子供を絶対に守るように、という方針がたつ。子供の前での「面前DV」も心理的虐待として焦点があたったという話が面白い。警察から児相への通報案件になった。

・信太:児相は厚生労働省管轄で、「虐待」は扱うが「DV」は通称で案件からはずれる。DVは内閣府管轄。縦割り行政の問題 総合的窓口が必要。警察は通報がなければ出られない。児相は親権に手が出せない。根本的には、子供が親の所有物のようになっていることが問題

・二人:家族しか受け皿がない問題。

・信太:更生プログラム 反省ではなくて、Unleran とLeran これまでの間違った考えをはずして、学びなおす。これを法的にやる必要。